『あみだぶに 染むる心の 色にでは 秋の梢の たぐいならまし』
浄土宗の宗祖、お念仏の元祖である法然上人は、過ごしやすい秋の季節にこんなお歌を詠まれました。
これは、梢が自然の恵みによって紅葉するように、私たちの心は、お念仏を称えていれば阿弥陀さまと心が通い合い、阿弥陀さまの優しい慈悲の心に染まっていくことを表しています。

さて、心がホッとあったまる、私のお参り先のお婆さんのお話を紹介させていただきます。
ある日、お婆さんのお宅を伺いますと、「娘婿が本当に良い人で、世話になるのが悪うて、早う迎えに来てもらいたいのです」と言われるのです。
この時、私は、お婆さんに生きる悦びに気づいて欲しいと思い、「今度、ハワイのお寺をお参りした時に、日本らしい紙の手まりを奉納したいと思っています。現地の信者さん達にあげたいから、お婆さんも協力してもらえませんか?」とお願いしました。

しばらく経って、お婆さんから連絡がありました。
「和尚さん。ひとつ折る度に、南無阿弥陀仏と申して作ったよ」と。
お婆さんは、大きなスーツケースがいっぱいになるほどの手まりを、大小合わせて100個ほど作ってくださっていたのです。

お婆さんの思いがこもった手まりをハワイで渡すと、現地の檀信徒さんは日本の心を思い出し、たいへん喜んでくださいました。
帰国後すぐに報告に伺うと、「良かった。喜んでもうて」とお婆さんは笑顔いっぱい。このことをきっかけに、生き甲斐を見つけたお婆さんは、「死にたい」と言うことはなくなり、小さな子どもさんや近所の方々に手づくりの手まりを贈る日々を送られ、「生き生き」と暮らされるようになりました。

このように、お念仏を申して生きていると、野島無量子上人が詠まれた『御仏と その日その日を 暖かに』の句のように、仏さまに生かされていることに気づき、周りの人に優しさや思いやりの心を施せる“暖かい心”で、日々を生き抜くことができるのです。